家族経営で離婚する場合の財産分与や役員の辞任手続きの方法について解説

家族経営をしている夫婦が離婚をする場合、経営に問題が生じるのではないかと不安になる人も居ると思います。

結婚後に設立した会社の場合は金融資産が財産分与の対象になる他、配偶者が従業員や役員であった場合には離婚だけを理由に解雇や解任はできません。

この記事は家族経営をしている夫婦が離婚をする際に関係する財産分与や役員の辞任手続き・解雇問題について解説します。

婚姻後に得た財産は財産分与の対象になる

財産分与とは離婚をした者が一方に対して財産の分与を請求することができる制度です。

財産分与の割合は会社経営者であっても、原則1/2となっております。

 

対象になるものは婚姻後の夫婦で築いてきた財産が対象になります。

ですが、分与の対象にならないものもあります。

 

【財産分与の対象になるもの・対象にならないもの】

対象になるもの 対象にならないもの
自社株式などの金融資産 会社名義の財産
不動産 婚姻前に築いた自社株式・預貯金
現金・預貯金 親から相続した財産
自動車など プレゼントで貰ったバックやアクセサリー等

 

財産分与の対象になる資産の中で注意が必要なのは、自社株や不動産など経営に関係する資産です。

これらの資産は結婚前に築いたものであれば財産分与の対象になりませんが、結婚後に築いた資産であれば分与の対象になります。

経営に関わる資産の分与を求められれば、離婚後に経営が立ち行かなくなる可能性が生じます

自社株の保有割合が1/3以上なければ経営権を失う

離婚によって自社株を財産分与した場合、株主総会において議決権がなくなってしまい、経営権を失ってしまう可能性があります

普通決議は一般的な決議方法で資本金の減少や定款変更などの重要事項で行われる特別決議等以外は、原則は普通決議で話し合いをします。

 

【出席要件と決議要件】

出席要件 議決要件
普通決議 議決権を過半数を持っている株主が出席 出席した株主の1/2超の賛成が必要
特別決議 議決権を過半数を持っている株主が出席 出席した株主の2/3以上の賛成が必要

 

たとえば、離婚後に配偶者と自分で持ち株比率が半分ずつになった場合に、配偶者に株主総会に出席されてしまえば、普通決議においても特別決議においても議決要件を経営者単独で満たせなくなってしまいます

婚姻期間で築いた自社株も財産分与の対象になりますが、非上場会社の場合は株式を評価するにあたって様々な計算をするため複雑になってきます。

財産分与は早めに専門家に相談すると良いでしょう。

役員や従業員の場合は離婚を理由に解雇することはできない

夫または妻の会社で、配偶者が役員や従業員として働いている場合においては、従業員は労働契約法によって雇用契約が、役員の場合は会社法によって委任契約が結ばれているため、私情による解雇や解任ができません。 

【従業員と役員の会社との契約と法律】

会社との契約 関わる法律
従業員 雇用契約 労働契約法
役員 委任契約 会社法

 

法律によって規定されているので、元配偶者を私情で解雇、または解任すると、不当解雇などの理由により裁判を起こされる可能性があります。

配偶者が従業員の場合は労働契約法が関係する

従業員を解雇するには労働契約法第16条で決められたルールに乗っ取って解雇する必要があります。

下記が労働契約法第16条です。

「使用者からの申し出による一方的な労働契約の終了を解雇といいますが、解雇は、使用者がいつでも自由に行えるというものではなく、解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、労働者をやめさせることはできません(労働契約法第16条)。」

引用:厚生労働省

 

例えば、従業員が「勤務態度が悪い」「無断欠勤が多い」「成績が著しく悪く、指導をしても改善されない場合」などの会社に悪影響を与える場合は解雇の対象になる可能性があります。

 

正当な理由があるのであれば解雇できるかもしれませんが、一方的に解雇をしてしまうと相手側から起訴されてしまう場合があるので、解雇をする場合には正当な理由と適正な手続きが必要になってきます。

配偶者が役員の場合は委任契約が関係する

役員の場合は従業員とは雇用契約が違って任期があります。

原則2年が任期となっており、任期が経過して再任しなければ任期満了で退任の方向へ持っていくことは可能です。

任期満了まで1年以上あり時間的に待てない場合は辞任を促し相手側から辞任してもらう方がトラブルにはなりにくいです。

 

相手側から辞任の意思がなければ解任をすることは可能ですが、解任をする際には会社側から独断で解任させることはできません。

解任にも会社法第341条で決められたルールを守る必要があり、解任をする場合は株主総会で決議する必要があります。

 

下記が会社法第341条です。

「第三百九条第一項の規定にかかわらず、役員を選任し、又は解任する株主総会の決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行わなければならない。」

引用:会社法

 

正当な理由になるのは「法令違反」「経営に失敗して会社に損害を与えた」「経営能力不足で客観的に見て将来的に会社に損害を与える可能性がある」などです。

役員の場合でも正当な理由がなければ解任は難しいでしょう。

正当な理由がなく解任した場合は相手側から会社に対して損害賠償をされる可能性があるので注意しましょう。

役員の辞退などの手続き方法は2通りある

自主的に役員を辞めるケースにおいても、書類だけあれば良いのではなく、役員退任登記を申請する必要があります。

役員退任登記の申請方法は下記の2つになります。

 

・自分で申請する

・専門家に依頼する

 

自分で手続きをする場合には書類作成から申請まで全部を行わなければいけませんが、費用を掛けずにできます。

ですが、書類作成などをする必要があるため時間と手間は掛かってしまいます。

専門家に依頼すれば書類作成から申請まで任せることができます。

 

費用は掛かりますが、専門家が代理で行ってくれるので、自分自身に時間が空き、財産分与の関する話し合いなどに時間を費やすことができます。

役員退任登記の申請は必ずしなければなりません。

 

他の手続きで時間が取れない、または自分で手続きを進めるのに心理的負担を感じる場合は専門家に依頼し、そうでない場合は自分で手続きを進めて見るのが良いでしょう。

退任登記申請の必要書類は辞め方で変わる

役員は「解任」「退任」「辞任」の辞め方によって必要な書類が変わります。

【辞め方と書類】

辞め方 書類
解任 ・変更登記申請書

・臨時株主総会議事録

・株主リスト

・委任状

(代理人の場合)

退任 ・変更登記申請書

・定時株主総会議事録

・株主リスト

・委任状

(代理人の場合)

辞任 ・変更登記申請書

・辞任届

・委任状

(代理人の場合)

 

面倒な手間を掛けずに役員を辞めたいと思うのであれば辞任を選択してください。辞任を選択すると、代理人申請でなければ2つ書類の準備をすれば役員を辞めることができます。

 

一方、解任や退任の場合は株主総会を開く必要があり、株主総会を開くにあたっては出席要件や決議要件の要件が満たされなければなりませんので、時間と手間が掛かってしまいます。 

負債がある場合は離婚後でも保証人継続の義務がある

会社に負債がある場合は離婚後でも保証人継続の義務があります。

会社を退職や辞任をした場合、他の役員など保証の義務が自動的に解消されることはありません。

保証人から外れるためには、債権者と相談する必要があります。

 

新たな保証人を選び金融機関に承認を得るか、借入をしている金融機関を変更する方法がありますが、必ず保証人から外れられるということはありません。

保証人から外れたい場合には、離婚が成立する前に専門家に相談をしておき、対処方法を検討しておくと良いでしょう。

まとめ

家族経営をしている夫婦が離婚をする場合は様々な問題が発生する可能性があります。

財産分与では婚姻期間中のものが対象になり、自社株の保有割合が1/3以上なければ経営権を失ってしまう可能性もあります。

 

役員や従業員は離婚が原因で解雇することはできず、一方的に解雇してしまうと損害賠償を起こされてしまうこともあるので、離婚をトラブルなく終わらせるためには専門家に相談しましょう。

家族経営のお悩みを解決します!

「融資を受けたいけれど、やり方が分からない」
「家族を役員にするべき?役員報酬について知りたい」
「法人化のタイミングについて相談したい」
といったお悩みに対して、私たちが丁寧にサポートいたします。

私たちは「家族経営者」の身近なパートナーであり続けます。
まずはお気軽にご相談ください。