家族経営で経営者が認知症になった場合、どういった問題が起こるのでしょうか。
この記事では、経営者が認知症になってしまった場合の問題点、認知症対策や、認知症になってしまった場合の事業承継方法について解説します。
目次
家族経営の経営者が認知症になると契約ができなくなる
家族経営の経営者が認知症になってしまった場合、法律上契約を行うことができなくなってしまいます。
経営者が認知症によって正常な判断ができない状態となってしまった場合、契約判断も正常ではないとされるからです。
契約書に本人以外が署名をすることは文書偽造として法律違反になってしまうので、他の社員が代行して契約をすることもできず、契約を行うことができないのです。
たとえば、経営者が認知症でサインができなくなってしまった場合、新たな契約をしようとしても代筆することができず、かといって本人に書いてもらってもサインが法的に無効になってしまうので、新規契約ができなくなってしまうのです。
新たな販路開拓はもちろん、融資を受けることもできません。
新規契約ができないのは問題なので、認知症によって契約ができなくなる前に経営者は事業承継を行わなければなりません。
家族経営の経営者が認知症になると事業承継ができない
新規契約ができないのも問題ですが、家族経営の経営者が認知症になると事業承継ができないことも問題です。
事業承継ができなければ跡継ぎに事業を引き継ぐことができないので、事業がその代で終わってしまうことになってしまうからです。
事業承継をするには、経営者本人が持つ株を後継者に譲り渡す必要があります。
しかし、株の譲渡も契約であるため、経営者本人が認知症になってしまうと株を譲渡できず、事業承継を行うことができないのです。
たとえば、株の80%を経営者本人が持っていて認知症を発症した場合、株主総会での決定権が経営者本人に残ったままになってしまいます。
本人に経営に参加する意思があれば、認知症で正常な判断ができないまま経営に口を出せてしまうのです。この場合会社の経営自体が混乱してしまう可能性があります。
死去後の相続は可能ですが、その場合株式が複数の相続者に分散してしまうこともあり、その株式を後継者に集中させる際に相続トラブルが発生してしまうかもしれません。
経営者が認知症になると事業承継ができず、会社経営にも悪影響がある可能性は覚えておきましょう。
認知症対策として家族信託を設定しておく
認知症になってしまっても問題なく経営ができるように、経営者が後継者に「家族信託」を設定する方法があります。
家族信託は、株式を家族に信託することで経営権を後継者に譲渡しておく方法です。
株式の経営権のみを委託することで経営者本人は受益権を残したまま、後継者が会社の運営を行うことができます。
家族信託を行うことで経営者が認知症になっても、契約を後継者が行うことができるのです。
また、経営者が実際に死亡した後は後継者に全ての株式が渡るようにしておけば、スムーズに事業承継を行えます。
たとえば、会社の株式を70%持っている経営者が息子に跡を継がせる場合、経営者は事前に息子に家族信託を行って会社の経営権だけを渡しておきます。
家族信託によって、経営者本人が認知症になっても息子が経営権を持っているので自由に会社経営をすることができます。
息子に経営権を渡してしまうことになるので、家族信託は家族の信頼関係が必要ではありますが、事業をスムーズに引き継ぐことができる方法です。
家族信託と生前贈与との違いは受益権が残ることと契約解除ができること
株式を家族信託する場合と生前贈与を行う場合の違いは、先代に受益権が残ることと信託契約を解除することができることです。
信託契約の場合、生前贈与と違って受益権が残るので株式の配当は先代がそのまま受け取ることができます。
また、信託契約は途中解除することができるので、信託契約を解除することで経営権を社長に戻すこともできます。
たとえば、家族信託を行ったものの後継者である息子に経営の才能がなく、経営が悪化してしまう場合は信託契約を解除し、先代が経営をする元の形に戻すことができるのです。
生前に株式贈与を行ってしまった場合は取り返しがつかなくなる場合があるので、まずは家族信託で様子を見るのも手です。
すでに認知症を発症している場合は成年後見人を利用する
家族信託や生前贈与といった対策を取っていない場合、成年後見人制度を利用します。
経営者に限らず、認知症で正常な判断ができなくなった場合には、契約を代理で行うことができる権利を持つ後見人を立てることができます。
これが成年後見人です。
経営者に成年後見人がついた場合、取締役の結核事項に該当するため社長を退任させることができます。
成年後見人制度を利用することで、認知症の経営者が暴走することなく、経営を健全化させることができるからです。
ただし、成年後見人は家庭裁判所が決めるので、基本的に司法書士などの専門家が成年後見人になります。
また、株式自体は先代が所有しているため、成年後見人となった司法書士が株主総会を開き、後継者を選任することになります。
司法書士は外部の人間なので事情を知らず、後継者を決める際に本来後継者になるはずだった人ではない人に経営権が渡ってしまう可能性があるのです。
たとえば、息子ではなく現在の役員に継がせる方針だったとしても、成年後見人が息子に継がせることを選択する、といった事態が発生する可能性があります。
成年後見人制度を利用する場合、思った通りの事業承継ができない場合があるので、可能であれば認知症を発症する前に相続や信託で対策を行っておきましょう。
まとめ
経営者が認知症になってしまうと、新たな契約を結ぶことができず経営に悪影響を及ぼす可能性があります。
家族経営の会社で経営者が認知症を発症してしまった場合は成年後見人制度を利用して事業承継を行うことになりますが、正常な事業承継ができるとは限りません。
早めの相続や家族信託を利用して認知症対策を行いましょう。